2011年7月30日土曜日

哲学入門

#twnovel 生きるとは何か。リビングで哲学入門書を読みふける俺の前に、妻がラーメンを置いた。「そう考えている間にも週末は過ぎていくの。そしてラーメンはのびる。私の予定は空いている。あなたがすべきことは?」俺は目の前の丼を見つめた。「…箸を取りに行く」あっ、と妻が苦笑した。

#twnovel ぽっかりと心に空いた穴が塞がらない。夜の街で路地裏の占いに呼び止められた。「無理に塞ごうとしないことだよ。余計拡がりかねないからね」僕は老婆に訊ねる。「手相に出てる?」「ただのアドバイスだよ、無駄に生き延びちまった老いぼれからのね」潮風が凪いだ。

かき氷

#twnovel かき氷になった僕たちは、夏の陽射しに溶かされるまでの刹那の時に愛し合う。文字通り一つになり、混ざり合い、そして蒸発してその生を全うするのだ。「なんか素敵なこと言ってみたって顔してるけど、蒸発する前に『アリの大群にたかられる』が抜けてるわよ。私は嫌だからね」

2011年7月27日水曜日

かしパン

#twnovel 友人から「貸しパン」が帰ってきた。そいつの本心が知りたくて「可視パン」を食べると、僕への憎悪の念が見えた。それを指摘すると、動揺した友人は発作的に「仮死パン」を食べて倒れた。なんたる悲劇。僕は自らの愚かさを悔い泣き叫んだ。その文句は「歌詞パン」に記されている。

思い出屋

#twnovel 倦怠期を迎えていた私達夫婦は、不要な思い出を買い取る「思い出屋」を訪れた。私が先に済ませ、妻が処置を終えるのを待つ。やがて現れた妻の姿に、私は心臓が高鳴るのを感じた。不要な思い出を消し去ったぶん、新婚当時の思いが近いのだろう。喜ぶ私に妻が言った。「あなた、誰?」

気がつくと

#twnovel 気がつくと外は雨だった。僕の人生はそんなことばかりだ。気がつくと大人になっていて、社会の歯車に乗っていた。今さら自分の愚鈍さに打ちひしがれても始まらない。そう悪いことばかりでもないさ。気がつくと隣で寝息を立てている彼女を見てそう思う。気がつくと雨音は止んでいた。

昔の話

#twnovel 昔の話なんですが…と男は言った。ここで見掛けた女性を忘れられないのです。それはいつのことですか?相手の顔は?ほらご覧なさい。夢だったんですよ。諭すと彼の魂は穏やかに召された。寂しさは常に私につきまとう。100年に1人位は、私の顔を覚えてる人がいて欲しいのに。

届かない

#twnovel 僕が綴った言葉が君のもとに届くことはない。けれど僕は綴ることを止めない。それは君が確かに存在していた証になるからだ。なんて偉そうなことを言ってごめん。単に僕は、僕自身が存在した証として書き綴っているに過ぎない。君をだしに使ってごめん。そんな言葉も君には届かない。

行列

#twnovel 昼間から行列に並んでいると、後ろのオヤジが「君は何のために生きているんだ?」と聞いてきた。はぁ?どうせ無職だよと思いつつ「ここのたこ焼きを食うためだ」と吐き捨てた。現在俺はそのたこ焼きチェーン店を数店舗任されている。人生分からない。あのオヤジが社長だったなんて。

花火

#twnovel 「ごめんね、私のせいで花火を観に行けなくて」僕は首を振る。「いや、このほうが独り占めできていいなって」花火のことを言ったつもりだったけど、何やら勘違いしたみたいな彼女の顔が、暗がりのなかでも真っ赤で可愛かったから黙っておこう。コンビニで買った花火を2人で囲む夜。

祖父

#twnovel 帰宅すると、死んだはずの祖父が居間で寛いでいた。早ぇよ、お盆は来月だぜと声を掛けたら、相手は向かいの家の爺さんだった。「冗談にも程があるわい!」不機嫌になった爺さんが出て行く。見送った先の煤けた一軒家に目を止めて気がついた。爺さん、あんた先週の火事で死んでるよ。

2011年7月24日日曜日

最後の日

#twnovel 「もう終わりにしない?」3度目のクレーンがぬいぐるみを取り損なったところで彼女が言った。突然の別れ話?僕は戸惑う。「今日が最後なんだって、ずっと考えていたの。だから…」サヨナラひと夏の恋。「だから今日は地デジテレビ買いに行くの付き合ってほしいな。何泣いてるの?」

2011年7月23日土曜日

エンドレス

#twnovel いつまでも物語に浸りたいという息子に、エンドレスの物語を書いた。追い詰められた犯人がラストで逃走、振り出しに戻って再び悪事を働く。盗んだ金銭でリゾート暮らし、ラストで捕まるも逃走して振り出しへ。3回ループして息子が言った。「パパ、このリゾートホテルがグルだよ」

2011年7月22日金曜日

S-Fマガジン リーダーズ・ストーリィ投稿

一昨日投稿しました。またもや5ヶ月振りです。
34作目の投稿になります。始めた頃は毎月出していたけれど、最近は年に2、3作のペース。
活動の幅を拡げていこうとはしているんですが、いっこうに拡がっていません…。

いつもと同じ銘柄の封筒を使い、いつもの書式で、いつもの郵便局から、いつも通り速達で(笑)。

覚えてる?

#twnvday #twnovel 記念日には花を贈ることにしていると話すと、同僚に「熱いね」とからかわれた。何の記念日か覚えてないけどな、と照れ隠しに言ったが、それもあながち間違いではない。彼女だってそうに違いない。「今日、何の日か覚えてる?」「待って。140字にまとめるから」

毎年7月22日はツイノベ記念日!(2009年7月22日から「140字で完結した小説作品、ツイッター小説」のタグとしてtwnovelが使われ始めた) #twnvday

カケル君

#twnovel カケル君は子供の頃から駆けっこが得意だった。陸上選手となった彼は大舞台でメダルを獲得した。「名前に恥じない走りが出来ました」笑顔でインタビューに答えるカケル君。でも僕は知っている。彼のお父さんは書道家だ。名前の由来が「駆ける」じゃなくて「書ける」だってことも。

とりあえずビール

#twnovel ねぇ大将。メニューにある「とりあえずビール」って何? え、店に入るなりお客さん達が揃いも揃って言うもんだから…って? そうだね、作る方はとりあえずじゃないよね。ビール1杯だって心を込めて注いでるんだよね。それじゃ、とりあえず「とりあえずビール」を貰おうか。

2011年7月21日木曜日

うなじ

#twnovel 「うなじ、好き?」ポニーテールを結った彼女の白い首筋に見とれていた僕は、心の中を見透かされたみたいでどぎまぎした。あ、でも、別に誰でもいいって訳じゃなくて…。彼女が看板を指す。「お昼、ここにする?」香ばしく甘い香りが漂う。あ、今日は土用の丑の日。うなぎか…。

耳度島

#twnovel 「耳度島」を手に入れた。耳の中に入れると島民達の声が聞こえる。悲喜交々の人情劇に僕は魅了された。あるとき島の娘に恋をした。彼女の声は僕に届くのに僕の声は彼女には届かない。やがて彼女は島の若者と結ばれた。悲しみに悶える僕の耳に、今日も幸せ一杯な彼女の声が響き渡る。

団地

#twnovel 廃墟? いや今でも何世帯か住んでいるんですよ、あの団地。夜になるとポツリポツリと灯りがつきますから。住人が去って行った理由? やはりあの一家心中でしょうね。…どうです、立ち話もなんだし、うちに寄っていきませんか? あの2階の角の、壁が焼け焦げた部屋なんですがね。

母の希望

#twnovel 「ピアニストを目指していた母の希望で、私は幼い頃からレッスンに明け暮れていました。嫌で嫌で仕方がなかったんです。だから私は、自分の娘には普通の生活をさせたいんです。平凡な大人になって欲しいんです」「ですからお母さん、それが親の押し付けだと気付かないのですか?」

アドバイス

#twnovel 「おこらないように願うのではなく、おこったらどう対処すべきかを考えるんだ。いいね」「震災の備えかしら?ちゃんとお兄ちゃんの話を聞くのよ」ママが立ち去るのを確認して、僕は兄にアドバイスの続きを請う。「テストの結果がこんな点数じゃ、母さんだって怒るよ。肝心なのは…」

2011年7月18日月曜日

海に行こうよ

#twnovel  「海に行こうよ」そう言って彼女が開いた情報誌。ビーチで小麦色に焼けた水着姿の女の子の笑顔に、僕は吸い込まれそうになる。あれ、焼きたくないって言ってなかったっけ? ふいに彼女の手が誌面を覆う。「私が焼きたくないのは焼きもち!」ごめんごめん。今日は海の日だね。

「あつい」って言った方が…

#twnovel メニューを眺めていた私に、向かい席の彼氏が言った。「先に『あつい』って言った方がおごるってのはどう?」節電中の店内はじっとりしていて、座っているだけで汗が浮かんでくる。「面白そうね」私は承諾し、彼は店員を呼び止めた。「俺、味噌ラーメンね」「じゃ、私は冷やし中華」

2011年7月15日金曜日

今日も暑いね

#twnovel 彼女とデート中、知り合いと遭遇した。「今日も暑いね〜」ありきたりな会話を交わしてすれ違ったあと、絡めていた彼女の腕がするりと抜けた。「…くっつきすぎかな?」そう言う意味で言ったんじゃないと思うけど、照れて俯いた顔が可愛いから黙っておこう。今日も熱いね。

不思議な眼鏡

#twnovel 不思議な眼鏡を買った。脳波を読み取り、不快な物を記号化してくれるという。装着してみたが特に変わった様子はない。ものは試しと、説明抜きで妻に渡してみた。怪訝そうに妻が私を見る。「この眼鏡が何だって言うの?それと、貴方が被っているへのへのもへじのお面。訳わかんない」

新型の耳栓

#twnovel 新型の耳栓を買った。脳波を読み取り、不快に感じる音を全て遮断してくれるという触れ込みだ。装着してみると蝉の鳴き声が止んだ。道路工事の掘削音も、隣家の夫婦喧嘩の怒鳴り声も聞こえない。実に素晴らしい。「で、貸した金いつ返してくれるの?」アーアー聞こえない。

2011年7月14日木曜日

たくあん

#twnvday 「たくあんはどうだった?」「食べた。美味しかったよ」「よかった。ほんとだ。一切れも残さず」「ずっと好きだった」「たくあん?それとも…」「勿体ぶった言い方しないからな。お前がだよ。いい加減気付いてほしいわ」「…私も好き」「キスしていい?」「いいけどたくあん臭いよ」


毎月14日はツイノベの日! 今月のお題は「たくあん」です! おにぎりの横に佇む姿、しみ込んだ味が食を進める、隠れた実力者、たくあん。たくあんを和える味が、あなたの物語にはありますか? #twnvday 【毎月14日はツイノベの日! お題「たくあん」 #twnvday 】

2011年7月13日水曜日

西瓜売りのおじさん

#twnovel この季節になるとやって来る行商のおじさんから、母は毎年律儀に西瓜を買っている。「あんたが子供の頃、弟が欲しいとダダをこねられてね。赤ちゃんは西瓜に入って来るんだと教えたのよ」私には年の離れた弟がいるが、父は私が幼い頃に亡くなっている。なるほど、そういうことか。

目隠し

#twnovel 読書中の彼女の背後にまわり、両手で目隠し。他愛のない悪戯だ。「恋愛小説とかけて今の私の気持ちとときます。そのこころは?」え? 予想外の反応に僕はオウム返し。「そのこころは?」「顔が見えないのにドキドキします」掌から急に汗が噴き出して、僕は慌てて手を引っ込めた。

2011年7月12日火曜日

雷雨

#twnovel 突然の雷雨に追い立てられ、僕らはコンビニの軒下に駆け込んだ。「どうしよっか」顔を上げると道路向かいにはホテルのネオン。気まずくなって、彼女の手を引くように店内へ。ビニール傘を2本取ってレジへ向かう僕の腕を彼女が掴む。「1本でいいでしょ?」微妙な加減がもどかしい。

アイツの彼女

#twnovel 「アイツ最近付き合い悪いよな。彼女でも出来たか」「そうだよ。知らなかったの?」「マジかよ? ちくしょう、先を越されたか。でもアイツが落とせるような女なんて、たいした玉じゃねぇよな」「何だ、それも知らないのか。お前の妹だよ」

心頭滅却すれば…

#twnovel 「心頭滅却すれば火もまた涼し、でしょ」暑い暑いと連発する僕をたしなめるように彼女は言った。確かにそうだけどさ、後に続く言葉を僕は飲み込む。無念無想の境地なんて無理な話だよ。照れ隠しだって分からないかな? 腕に絡まる君の柔らかい感触で、僕の頭の中は一杯なんだって。

2011年7月11日月曜日

夏は好き?

#twnovel 夏は好き? 彼女に聞かれ、僕は慌てて視線を逸らした。勿論、好きだよ。胸元の大きく開いたシャツが、とは言えない。僕らは知り合ったばかりなのだ。焦ってはいけない。私も好きよ。彼女は悪戯っぽく笑った。夏は本性がすぐ見えるから。僕は再び視線を逸らす。青すぎる空が眩しい。

超強力万能掃除機

#twnovel 超強力万能掃除機を手に入れた。「どんなゴミも逃さない!ゴミの原因を根こそぎ吸引!」頼もしい。スイッチを入れた途端、掃除機が唸りを上げて俺に襲いかかってきた。「だから暫くかくまってくれ、って言うのがプロポーズの言葉」「掃除が済んだら別れちゃいなさいよ、そんな相手」

2011年7月9日土曜日

履歴屋

#twnovel 転職にあたり、履歴屋から見栄えの良い履歴を買った。一流大学出身、海外留学、資格多数。そのおかげで一流企業に就職が叶った。しかし、入社してみると三流以下の企業にしか思えない。上司が言った。「法人向けにも似たような商売があってな。うわべの業績なら金で買えるんだ」

2011年7月8日金曜日

時間に大らか

#twnovel あいつは遅刻ばかりしてたなぁ。友人達が咲かせた話に取引先の老人が加わる。私も随分泣かされましたよ。時間に大らかだった故人が焼き上がるのを待つ火葬場のひととき。待合室に顔を出した親族が済まなそうに言った。「もう少し、かかるみたいです」彼らしいね。座がどっと笑った。

2011年7月7日木曜日

短冊に願いを

#twnovel 祭り会場で3人並んで短冊に願いを託した。何を書いたの?と彼女に聞かれた僕は、奴がジュースを買いに行ってるのをいいことに抜け駆けを試みる。「右隣の人の願いが叶いますように、って」彼女は笑みをもらして言った。「わぁ、私と同じ」ちょっと待て。彼女の右隣は僕じゃない。

七夕貯金

#twnovel 「七夕貯金をしているんです」逆さに吊されたてるてる坊主を訝しむ僕に、彼女は言った。「雨でもいいやという日は逆さにして雨を願うんです。そうして貯めた一年分の晴れを、七夕の日に下ろすんですよ」子供みたいでしょ、と照れくさそうに笑った彼女は、天文台で働く学芸員。

七夕は記念日

#twnovel 僕らは七夕の日に出会った。付き合いだしたのは翌年の七夕。七夕は僕らの記念日だった。だから入籍日を七夕に合わせたのも自然な流れだろう。でも離婚届けまで七夕の日に出すのはどうなんだ? 今年もこの日が来た。今では七夕は、年に一度子供達に会える日になっている。

超高齢化社会

#twnovel 超高齢化社会。政府は「末期高齢者」と位置付けた90歳以上への「余生一時金」の支給と、それ以降の年金支給の打ち切り、医療保険制度の廃止を決定した。いわゆる「姥捨て法」である。ニュースを見た母が溜め息をつく。「子消し法も成立しないものかねぇ」…この世代には勝てない。

エアコン要らず

#twnovel エアコン要らずで涼がとれるという噂のラーメン屋に足を運んだ。カウンターにつくと確かに背筋がひんやりする。「冷房?入れてませんよ」大将は笑って麺を茹でている。「ちょいと訳あり物件を借りただけでね。ちょうどお客さんの足元あたりかな、仏さんが倒れてた場所は」

過酷な健康診断

#twnovel 世界一過酷な健康診断。全ての検査項目で異常なしの結果を出さなければいけない。脱落者は文字通り次々とふるい落とされる。その姿は果物の出荷工場の選別風景にも似ていた。「落とされた人はどうなるのですか?」「ご心配なく。医学界が有効に活用します。規格外の果物のようにね」

夏のかけら

#twnovel 夏のかけらを買った。焼けつく日射しに揺れる陽炎、潮騒の香りに身を委ね、あの夏を想う。続けざまに次の封を解く。外界との接触は1台のラジオのみ。絶望のない、美しい世界だ。「それでは次の相談です。お兄ちゃんがお風呂に入浴剤を何個も入れるので困っています。どうすれば…」

2011年7月4日月曜日

扇風機に足(完結編)

#twnovel 私は横町の発明おじさん。扇風機に足を取り付ける発明を断念した。億劫がらず自分で向きを調整すればいいのだ。行きすぎた科学は堕落を生む。「ちょっとあんた、風こないわよ」逃げ出した初代扇風機は神の啓示であった。トドのように横たわる妻に風を送りながら、真理に触れた夏。

扇風機に足(後編)

#twnovel 私は横町の発明おじさん。扇風機に足を取り付けてみた。2代目は逃げ出すこともなく、私の姿を認めるとヨチヨチと寄ってきた。そして私の隣に座り…なぜお前が一番涼しい場所に陣取るのだ? お気に入りの場所を扇風機に奪われた私は3代目の製作を決意した。まだ夏はこれからだ。

扇風機に足(前編)

#twnovel 私は横町の発明おじさん。扇風機に足を取り付けてみた。人の居場所を感知し、最も涼しく感じるポジションに移動し風を送る…はずだったが、どういうわけか逃げだした。仕方なく私は2代目の製作にとりかかった。快適な風を得るべく、今年の夏はこの研究に全てを注ぐつもりだ。

節電温度28度以下

#twnovel 「どう、節電してる?」「もちろん。室温は28度以下にならないよう、こまめにチェックしてるよ」「偉いな」「これが結構手間でね、ホラ、うち高台で涼しいだろ? だから何もしなくてもよく28度以下になるんだよ。夏場にわざわざ暖房を入れるのは苦行だぜ」「それ本末転倒」

節電モード

#twnovel テレビに新たな節電モードが搭載された。映る価値のないタレント、流す価値のないニュース等を画面から排除する。価値のないものに電力を消費するのは無駄だ。どのチャンネルもすっかり静かになった。時折、売れない芸人が顔を出す。彼らの寒いギャグで視聴者はささやかな涼をとる。

人間関係トリモチ

#twnovel 人間関係トリモチで、友人知人を好き勝手にくっつけた。たいして仲が良いわけでもなかった連中が恋仲に発展するさまは滑稽で楽しかった。やがて僕は一人になった。時折思い出したかのようにハガキが届く。「ありがとう。君は僕たちのキューピットだ」そんなつもりじゃなかったのに。

思考読み取り装置

#twnovel 人の思考を読み取ることに成功したという博士にインタビューを行いました。「頭蓋骨から脳を取り出してこの機械にかけると、その直前の考えが読み取れるんじゃよ」ちなみに、今まで見てこられた方の結果はどのようなものでしたか? 「全員、「死にたくない」だったな」

小窓

#twnovel 部屋の隅に見慣れない小窓がついていた。覗くとそこは自分の部屋。卓上カレンダーは明日の日付だ。万年床では俺がいびきを掻きながら寝ていた。明日もこの様か、怠け者め。舌打ちをして俺は万年床に戻った。「チッ」背後で物音がした。振り返ると反対側の隅にも小窓がついている。