2012年6月26日火曜日
同窓会を前に
#twnovel 同窓会を前に、微かな青春の記憶を修復屋に持ち込んだ。断片をクリーニングし、欠落箇所を一般的な記憶で曖昧に埋めるのだという。化石の修復じゃあるまいし、そんな出来合いの記憶なんて御免だ。憤慨する私を店員が諭す。「だから笑い合えるんです。記憶なんてそんなものですよ」
物忘れ防止
#twnovel 「博士、物忘れ防止の薬を発明したそうですね。効き目は確かなんでしょうか?」記者の問いかけに博士は曖昧に頷いた。「ああ。ただ副作用があってな。いや、効能と言うべきか」咳払いをして博士は続けた。「服用するとそれ以降、何も記憶できなくなる。だから、忘れることもない」
ハザマさん
#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が珍しく旅行雑誌を眺めている。ああ、ピサの斜塔ね。一度登ってみたいよね、倒壊する前にさ。冗談でそう呟くと、彼は真剣な表情で首を振った。「馬鹿者。倒壊する前に降りるんだ、いいな」
ラッキーな
#twnovel 実にラッキーな夢を見た。夢の中の僕は中小企業の係長で、嫌な上司と生意気な部下との板挟みの中で夜遅くまでサービス残業をこなすんだ。気がつくと夜が明けてきてさ、延々とその繰り返し。「その夢のどこがラッキーなんだよ」「家に帰らなくて済むんだ」「…奥さんと何があった?」
欠けたもの
#twnovel 自らに欠けたものに惹かれ合い、僕らは結ばれた。補い合って視野が開かれ、死角は消失する。君の見た世界が僕に伝わり、僕の世界は君のもとへ。こんなに隅々まで見渡せるのに、君の姿を見ることは叶わない。2人は表裏一体。背中越しのぬくもりを信じて、今日も僕らは愛を交わす。
2012年6月16日土曜日
河童
#twnvday 河童を見掛けたと噂の現場を訪れた。野次馬でごった返しているかと思いきや、町外れの小さな沼は閑散としている。「今さら河童で町興しなんざ、誰も気に留めんよ」散歩中の老人が教えてくれた。手袋を嵌めた手で僕は帽子を目深に被り直す。…せっかく仲間に会えると思ったのにな。
毎月14日はツイノベの日! 今回のお題は1912年に柳田國男さんの『遠野物語』が発刊されたことにちなんで「妖(あやかし)」です。物語られることで息づく幾千幾万の妖。140字 の時の川で、何と出逢うでしょうか?【毎月14日はツイノベの日! お題「妖(あやかし)」
毎月14日はツイノベの日! 今回のお題は1912年に柳田國男さんの『遠野物語』が発刊されたことにちなんで「妖(あやかし)」です。物語られることで息づく幾千幾万の妖。140字 の時の川で、何と出逢うでしょうか?【毎月14日はツイノベの日! お題「妖(あやかし)」
ハザマさん
#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が運動不足の僕にスポーツジムのチラシを差し出した。無理無理、そもそも通うお金ないもん。そう言うと彼は頷いた。「そこまで距離にして20km、徒歩で往復するだけでいい運動になるぞ」
指先
#twnovel 手探りで君を探してる。指先を伸ばせば触れられるのか、それとも全く届かないのかも分からない。かすかな温もりは君がかつてそこにいた証。ワンクールで都合よく大団円を迎えることのない不器用な戯れは、お互いを探しながらずっと続く。いつか暗闇を照らす光が差し込むその時まで。
ハザマさん
#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼の勧めで受けた入社試験は、面接までこぎ着けたものの落とされた。落ちるなら最初から勧めないで。落胆する僕を彼は不思議そうな顔で見た。「俺が勧めた社員食堂のカレー、旨かっただろ?」
2012年6月8日金曜日
先代
#twnovel 同僚に連れられて入った定食屋。脱サラして創業した先代の頃には潰れかけたこともあったが、二代目が継いでからは順調だという。メニューに「復刻版冷やし中華」なるものがあった。先代が初めて出した冷やし中華を忠実に再現した、とある。「やめとけ、味も忠実に再現されてるから」
2012年6月5日火曜日
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