2012年11月24日土曜日

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、僕が赤信号を見落として車にはねられる未来を見てきたと言う。どうして注意してくれなかったの? 問い詰める僕に彼は言った。「ちゃんと言ったはずだ。道路向かいの美人のこともな」

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が商店街の福引き券をくれた。引いてこいと言う。わざわざくれるってことは、当たるってことだよね? そう尋ねると彼はキッチンの流しを指して言った「あと2巻きでラップが切れる」

契約は

#twnovel 契約は絶対だよと悪魔は言った。僕は一生涯の幸福を手にし、魂を手放す。あまりにも累計的やしないかい? 訊ねた僕を彼は笑う。そっちだって。長い年月が過ぎ、悪魔が催促に訪れた。君との契約は不幸な出来事だったよ。僕の告白に彼は地団駄を踏む。契約は絶対だよと僕は付け足す。

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、酒屋に行かないのかと聞いてきた。ああ、今日はボジョレーの解禁日だよね。でも今夜は肉じゃがを作るんだ。合うかなぁ。そう答えると彼は戸棚を指して言った。「みりんを切らしてる」

幸せ

#twnovel 子どもがお小遣いを貯金箱に貯めるように、僕らは小さな幸せをちまちま集めている。たまに底が破れて流れ出し、それを前にお互いを罵ったり泣き喚いたり。仲直りのココアを並んで飲み干す頃、片隅でちゃりんと音が鳴る。顔を見合わせ覗けば、底のほつれは元通りに。この繰り返し。

木枯らしを避けるように

#twnovel 木枯らしを避けるように路地裏に逃げ込むと、自分が来ることを待っていたかのようなタイミングで赤提灯が点った。戸惑いつつも暖簾をくぐると温かい灯りに包まれた店内で笑顔の女将が出迎えてくれて…。「っていう演出つきの自販機を考えたんだけど?」「余計むなしくなるだけだろ」

ハザマさんスピンオフ

#twnovel もしかしたら私は、不幸な星のもとに生まれたのかもしれません。思えば散々な人生を送ってきました。でもそれを誰かのせいにしようとは思いません。神様は乗り越えられる試練しか与えないと聞きます。私の人生もすべて、神の思し召しなのでしょう。「ハザマさん、仕事は?」「あ、」

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、帰宅前に僕が家の鍵をどこかで無くしてしまうという。無くす時に教えてよ、家に入れなくなるじゃない。そう文句を言うと彼は言った。「大丈夫だ。出掛ける時に鍵をかけ忘れているから」

恋愛予防接種

#twnovel 「知ってるか? 受験生の間で『恋愛予防接種』というのが流行ってるらしい」「何だそれ」「この大事な時期を、色恋なんぞにうつつを抜かして棒に振らないようにって」「へぇ。じゃ俺も受けてみようかな」「体調が悪い時はやめとけよ。他の予防接種と同じで、逆に熱が上がるそうだ」

本日のコーヒー

#twnovel バイト先の喫茶店で客にクレームを付けられた。注文した「本日のコーヒー」の味が、昨日飲んだものとまるで違うというのだ。そう言われても、このメニューは文字通りの日替わり。そう説明すると、客は納得した様子でこう言った。「分かった。それなら「先日のコーヒー」をくれ」