2011年12月9日金曜日

安易に

#twnovel 「安易に口に出すと安っぽくなってしまうから、俺は好きとはあまり言わないよ。分かってくれるよね?」クリスマスだからと浮かれてはいられない。「もちろんよ。私も口に出すと安っぽいものになりそうだから、あえてプレゼントとは言わないことにするわ。分かってくれるよね?」

後日

#twnovel グルメ便の箱にお詫び文が入っていた。「好評を頂き製造が追いつきません。味は後日お届けします」商品は届いているし意味が分からない。食べてみるとこれが期待外れの不味さ。こんなものが好評とは世も末だ。数日後、突然口の中に濃厚な美味が広がって、僕は自らの愚かさを呪った。

師走薬

#twnovel 「師走薬」が人気だ。服用するとプレゼントやケーキを無性に気にしだし、忘れてはいけないことも宴会で忘れたことにしてしまう。僅か1週間ほどの間に2度の改宗をし、その後は普段は目もくれない窓拭きに精を出す。傍から見ると滑稽以外の何物でもないが、本人は充実感に浸れる。

2011年12月1日木曜日

主役

#twnovel 「俺、いじめられっ子だったんだけど、一度お芝居で主役を演じたことがあるんだ」「何の劇?」「おむすびころりん。転がされたり穴に落とされたり大変だったけど」「おじいさんは落とされてないだろ」「え、主役っておむすびじゃなかったの?」「やっぱりいじめられてたんだよお前」

夜

#twnovel 「無実の罪で囚われた恋人の死刑が明朝、執行される。そんな夜があったとしたら、君ならどう過ごす?」「聞くだけで胸が締め付けられそうだ。正気じゃいられない」「だろ?俺がかける言葉もない」「君の彼女にかける言葉ならあるよ」「何?」「大丈夫。明けない夜はない」

爆発

#twnovel 「オリオン座のベテルギウスの超新星爆発が近いんだってね。100年後かもしれないし、明日かもしれない。星座の形が変わるなんて、凄いことだよね」「浮気がばれた君ん家は、奥さんが昨日爆発したんだね。君の顔の形が変わるほどに」「…100年後なら良かったんだけどな」

必要のないもの

#twnovel 自分にとって必要のないものを認識しなくなる薬が発明され、世の中はかなりスッキリした。道を歩いても塵一つ落ちていないし、苦手な知人に出くわすこともない。ただ一つだけ困っていることがあって、最近大好きな彼女に声を掛けても無視されてしまうのだ。副作用なのだろうか?

蟹缶

#twnovel 友人から「手が蟹缶で動かない」とメールが来た。「かじかんで、だろ!」とツッコミを入れると画像が添付されてきた。確かに手が蟹缶になっている。「でもやっぱり自分の手みたいなんだよ。よく見ると毛蟹じみ出てる」「食べタラバ美味そうだな」いかん、こっちも蟹缶できた。

祈り

#twnovel 執行の朝、死刑囚は澄んだ瞳を向けた。「神父様、お世話になりました。先に天国で待っています」小さな町で起きた殺人事件。以前から親交のあった彼を導くのは私の務め。冤罪を訴え続けていた彼、私が天国で彼と会うことは許されないだろう。真犯人の行き先は地獄と決まっている。

希望ではなくとも

#twnovel 間もなく地球は崩壊します、と告げてニュースは終わった。ベランダから見下ろす国道は既に大渋滞。僕らも、と言いかけた言葉は珈琲の香りにかき消される。「雨の日は外出したくないの」彼女は微笑んで窓を閉めた。そうだね、今を楽しむ時間さえあればいい。希望ではなくとも。

フカヒレ

#twnovel 動物愛護の観点からフカヒレの流通を取り締まるべきとの声をきっかけに、様々な食材に規制の網がかけられた。高級食材に縁のない我々庶民にも他人事ではなさそうだ。日本にも諸外国が眉をひそめる数々の残酷な庶民食が存在する。たい焼き、うぐいすパン、そしてカッパ巻きなど。

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、金に困った僕が将来、強盗の罪で逮捕されると告げた。そんなことになる前にアドバイスしてくれなかったのかと詰め寄ると、彼は言った。「したよ。やるなら夜明け前がいいって」

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、僕の結婚式に面会してきたと言った。結婚なんて諦めていた僕にとっては朗報だが、出席ではなく面会?訝しんでいると彼は続けた。「獄中結婚だからね。それくらいしか出来なかったのさ」

パラレル同期会

#twnovel 入社試験に落ちた人達が集うパラレル同期会。もし入社できていたら今頃あの職場でこんな大きなプロジェクトを動かして、などと歓談に花が咲く。現在の立場はここでは関係ない。皆、一流企業のパラレル同期生なのだ。実体がないぶん、常に理想を語ることのできる憩いの場でもある。

2011年11月12日土曜日

野良

#twnovel コタツでミカンを食べていると、猫が入ってきた。友人は庭に面した大きな窓に手を掛ける。「逃がすの?」「野良なんだ。たぶん次は向かいの家に行くと思う」窓が開き、コタツはのっそりと部屋を出て行った。取り残された私たちは、猫で暖を取りながら二つめのミカンに手を伸ばす。