2011年8月26日金曜日

総理は…

#twnovel 総理は閣議後の記者会見の席で、自らの進退について次のように述べた。「帰化申請を行い、第二の人生は微笑みの国で過ごしたい。私はやるべきことはやってきたつもりだ。今後はサムイやプーケットで美しい海を眺めて暮らすのもいいと思う」いわゆる「タイ人表明」である。

時のかけら

#twnovel 時のかけらには小さな時間が閉じ込められていて、集めると特典が貰える。老人の手元からこぼれ落ちた時のかけらを拾った少年が歓声を上げた。時を得た少年は大人になり、老人は時を止める。やがて年老いた少年は子供達に時のかけらを撒く。特典という名の思い出を脳裏に残して。

聞き間違い

#twnovel もう夏も終わりね、と呟くと友達が呆れ顔で口を挟んだ。「季節より気の移り変わりが早いのもどうかと思うよ。こないだまでラブラブに見えた彼が、あんたの中では既に除け者っていうのもねぇ」「そうね、私の上で素で獣だったからねぇ、彼」聞き間違いと気付いたのはそれから3秒後。

食器洗い乾燥機

#twnovel その食器洗い乾燥機が回収騒ぎとなった理由は、食器だけではなく、人の心も洗ってしまうことが判明したからだ。食後の一家団欒に心を洗われた人々は一様に会話が弾み、円満な家庭生活の一助ともなる効果が認められた。その後の乾燥機能まで人間に適用されてしまうことを除けば。

今日は…

#twnovel 入口前に繋がれた犬が飼い主を探して鳴いていた。今日は買わないと決めていたのに、いざ店に入ると心が揺らぐ。売り場でそのつぶらな瞳と目が合った瞬間、私の理性は吹っ飛んだ。「予定を変更して、今夜はサンマにします」…焼き肉を楽しみにしていた子供達から一斉にブーイング。

2011年8月23日火曜日

夏が過ぎたら

#twnovel 夏が来れば思い出す。「それじゃ、夏が過ぎたら忘れちゃうんだ」からかうような口調の中に、僕は一抹の寂しさを感じ取る。そう、たぶん夏が過ぎたら僕は君のことを忘れてしまう。でもいつか必ず思い出す。一抹の寂しさは、大きな喪失感の残り香だってことを僕らは知っているから。

魔法の物語

#twnovel 古書店で見つけた読むと文字通り本の中に入り込めてしまう魔法の物語。現実に嫌気がさしていた僕は迷いもなく頁を捲る。光が溢れ、物語が僕を引き込んだ。「今日はここまで」少女の声に我に返った。どうして?これから面白いところなのに。僕は本の中に取り残された。…栞として。

ハザマさん2

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいる。幼い頃から人生の節目に現れては、僕にアドバイスをくれる。そんな彼が、僕がギャンブルで破産した未来を見たと言う。どうしてアドバイスしてくれなかったの?文句を言うと彼は言った。「したよ。彼女との結婚はギャンブルのようなものだって」

言葉

#twnovel ある日突然、人類は言葉を失った。社会は一時的に混乱を来したが、時の経過と共に概ね収束に向かいつつある。男達はいち早く以前と変わらぬ生活に戻った。一方で、女達の混乱はしばらく収まりそうにない。

2011年8月20日土曜日

設定

#twnovel 学生時代には何とも思っていなかったクラスメイトの子と、実は当時付き合っていたという設定で思いを巡らせてみた。一つ一つの凡庸な思い出が補正されて美しく輝き出す。実態のない妄想だから別れの痛みもない。問題があるとすれば、僕が通っていたのが男子校だったということだ。

十分

#twnovel 生まれ変わっても一緒にいようね、恋人達のそんなセリフには正直反吐が出る。生まれ変わろうが変わるまいが、出会いはいつだって偶然の産物。生まれ変わってもあなたを見つけられますように。それだけで、十分に奇跡。

炭酸

#twnovel 友人の失恋話に相づちを打つ。悪いと思いつつも奢りの炭酸が喉に心地いい。帰り際、友人はすっかり気の抜けたコーラを一口含んで言った。「恋愛ってコレみたいだね」「儚く消える泡ってこと?」顔をしかめて首を振る。「いや、ぬるくなったら甘ったるくて飲めたものじゃない」

河童

#twnovel 河童を捕まえようと沼に張り込んだ。相手に警戒心を抱かせない為に皿を乗せ甲羅を背負った。沼に逃げられても追えるように泳ぎも覚えた。それから何年経ったか分からない。いつものように茂みに身を潜めていると背後で人の声がした。「いたぞ、河童だ!」私は慌てて沼に飛び込んだ。

カブトムシ

#twnovel 「子供の頃、飼っていたカブトムシが死ぬと夏も終わりだなって思ってた」いつかそんな話をしてたよね。夏が終わる度に遠い貴方の言葉を思い出す。カブトムシじゃない貴方はこの空のどこかで今日も生きている。もう会うことは叶わないけど、でもだから貴方のことを憎み続けられるの。

思い出を

#twnovel 発病前の状態まで肉体の時を巻き戻す。細胞の時間を遡行させる薬は、人類が病に打ち勝つ決定打となった。リハビリに励む彼女に別れも告げず、僕は病院を後にする。後悔はしていない。脳も細胞である以上、例外ではないのだ。彼女は輝きを取り戻すにつれ、僕との思い出を失っていく。