2013年2月9日土曜日

『サイバークライム 悪意のファネル』『式霊の杜 愚者の約束』

Pubooにて公開中のアンソロジー「セラエノの小さな物語」「セラエノの小さな物語2〜大人になるまで死ねなかった子供たちの童話〜」でご一緒させて頂いている、作家の一田和樹先生の新刊が発売されます。

『サイバークライム 悪意のファネル』は著者が切り開いた、サイバーセキュリティミステリーの最新刊。
『式霊の杜 愚者の約束』は歴史ファンタジー、式霊の杜の第二弾です。

縁あってデビュー前から先生の作品に接する機会に恵まれた訳ですが、その圧倒的な創作エネルギーはデビュー後も落ち着くどころか、ますますパワーアップしている感じがあります。
新進気鋭の期待の作家であることは間違いありません。
発売日が楽しみです。

創作活動報告

現在発売中の早川書房S-Fマガジン3月号「リーダーズ・ストーリィ」にて、拙作が選評に取り上げられています。16度目の入選はならず残念。タイトルは「慈しみの森」。ひとまずお蔵入りですが、いつかどこかのアンソロジーやらブログやらで公開するかも知れません。

先月20日に締め切られた「第23回ゆきのまち幻想文学賞」に投稿しました。確か10年以上前に一度投稿した記憶が…。こういうのは続けなくちゃいけないなぁと思いつつかなり久しぶり。

講談社小説現代「ショート・ショート・コンテスト」用の投稿作をひとまず書き上げました。推敲して今月中に投稿予定。こちらも2、3年に一度投稿するペースです。もっと書かないといけません。

諸般の事情により遅れていた荒蝦夷「みちのく怪談コンテスト2010傑作選」が、いよいよ2月中に発刊されるそうです。拙作も2作収録されているはず。楽しみです。

生前葬

#twnovel 「ほら、生前葬ってあるじゃん」「生きてるうちに自分の葬式を済ませちゃうってアレか?」「そうそう。だからさ、そんな感じで今度俺の送別会を開いてくれないかなぁ。まだ会社辞めるつもりはないんだけど」「…苦労してるな。月末までまだだいぶあるのに、もう小遣いが尽きたのか」

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、僕は今日バイトに辿り着けないと言う。雪で電車が止まってる?降りかけの階段を引き返そうとした僕は、足を滑らせ下まで転げ落ちた。痛みで動けない僕に彼は言った。「電車は動いてる」

タイミング

#twnovel 転んだら危ないし。繋ごうとした手をにべもなく断られ、僕は雪の空を仰いだ。こんな事で彼女との距離を測りあぐねる自分が情けない。「お昼、そこにしよ?」引かれた手に我に返る。ガラス窓の向こうの温かな空間。赤信号に並びながら、僕らは一度繋いだ手を離すタイミングを見失う。

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、僕が昼食抜きで今日1日を過ごすハメになると教えてくれた。危なかった、うっかり財布を忘れて出るところだったよ。お礼を言って玄関を出た僕に彼は言った。「中身は入っているのか?」

解約の…

#twnovel 悪魔による契約書類の説明を、私は上の空で聞いていた。仕方あるまい。念願だった永遠の命を手に入れるのだから。「…で、こちらが解約の際の申請用紙になります」ちょっと待て。解約する奴がいるのか。驚いて聞き返すと悪魔は頷いた。「ええ。大抵、奥様からの申し出になりますが」

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が傘を2本持って行けと言う。なに?憧れの彼女が傘を忘れて困ってるところに出くわすとか?そんなシチュエーションを想像してワクワクしていると彼は溜め息をついた。「この甲斐性無しが」

日本史

#twnovel 静まり返った図書館で、ふいに彼女がついたての向こうから顔を出した。…ねぇ、年貢の納め時っていつだと思う?彼は開いていた日本史の参考書から目を離し、周囲に気遣い彼女の耳元に囁いた。…やっぱり秋なんじゃないかな。「それが?」「ウチの両親のプロポーズの言葉なんだと」

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼にも成人式の思い出があると言う。へぇ、そんな時代があったんだと感心すると彼は続けた。「笑うなよ。…1日勘違いしたんだ」うん、笑わない。だってハザマさん、今でも1日勘違いしてる。

馴染みの

#twnovel 馴染みの定食屋の店内がクリーニング店に変わっていた。「いつも同じだと飽きるでしょ?」店主は俺が着ていたスーツの上着をスルスルと引きはがしてタグを付ける。呆気にとられながらもいつものカツ丼を注文すると、彼は頷きながらこう言った。「仕上がりは夕方になります」

喧嘩

#twnovel 二人でかき集めてきた想い出を、彼女が勝手に処分する。僕らの喧嘩はいつもそんな具合だった。仲直りをし、手を取り合いながら新しい最初の想い出を一緒に選ぶ。今度もそのつもりでいたのに。「ただいま」と声に出してみた。がらん、としたリビングは二人の想い出で溢れ返っている。

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が正月早々やって来た。ちょうど良かった、今もちを焼いてるところなんだ。食べない?そう訊ねると彼は時計に目をやってから言った。「食べるのは少し待て。今呼んでも救急車が間に合わん」

七草粥

#twnovel 七草粥って明日?気が早いかな?頭を掻いてそう出迎えた僕に、彼女は溜め息をついた。そうだ、美味しいお酒があるよ。一緒に飲まない?顔を出したら湯気立つ鍋で押し戻された。「大人しく寝てなさい」とん、とコタツに置かれた卵酒。彼女が普段より艶っぽく見えるのは熱のせいかな。