2012年12月24日月曜日

ハザマさん Christmas Eve

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼にクリスマスの思い出を話した。あのね、子供の頃本当にサンタが来たんだ。壁を摺り抜けて部屋に入って、枕元にプレゼントをね。そこまで話すと彼はぷいと視線を逸らした。「起きてたのか」

ハザマさんスピンオフ

#twnovel このまま時が止まってしまえばいいのに。あの頃、夢中で過ごした幾つもの季節の中で、彼女はよくそんな言葉を口にした。俺は彼女のささやかな願いを叶えた。…今でも疑問に思うときがある。彼女はなぜ、自分が認識できない事を願ったのだろうと。「ハザマさん、考え事?」「いや」

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、明日の健康診断は気を付けろと言う。そんなこと今さら遅いよ。こういうのは日頃からの健康管理なんだから。そう答えると彼は言った。「採血担当の看護師、明日が初日の新人だそうだ」

物忘れ

#twnovel 酷い物忘れを訴える私に、医者は記憶の容量が満杯だからですと言った。古い方か新しい方、どちらかから自動的に記憶を消す処置を勧められる。大切な思い出は失いたくないので新しい方から消してもらうことにした。私は見知らぬ医者と向き合っていた。すみません、ここはどこですか。

寒いから

#twnovel 寒いから冬は嫌い。僕がそう言うたびに彼女は口を尖らす。この季節ならではのメリットも沢山あるでしょ。するりと腕を絡ませてきた柔らかい香りにふと思い出す。初めて腕を組んだのもこの季節だったっけ。柄にもなく火照ってきた顔を見られまいと、僕はマフラーの中に顔を埋めた。

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、来年のカレンダーをくれた。あれ、経費削減がどうのとか言ってなかった? めくってみると途中までしかない。何これ? そう尋ねると彼は目を逸らした。「だから、無駄は省いている」

今年も

#twnovel 今年もあとひと月だね。僕が首をすくめたのは風のせいか、それとも彼女の言葉に対してなのか。道ゆく誰もが急いでいるように見えるのは多分思い込みなのだろう。舞い降りた一片の雪に空を見上げる。今年もあとひと月だね。オウム返しに答えた僕を覗き込んで、彼女はクスリと笑った。

伝統の火

#twnovel 何百年でも鮮度を保つ進化した冷凍食品は、高級料亭もこぞって採用した。「このままだと調理文化は絶滅だ。どうしてくれる!」リストラされた料理人が開発元に怒鳴り込んだ。「心得ております。我々とて伝統の火を消したくはない」彼らは料理人を縛り上げると冷凍庫に放り込んだ。

退重計

#twnovel 「退重計」に乗ると体重が減る事に気づいて以来、毎日乗っている。太ってた私が必死のダイエットで手に入れたスリムな身体。気の緩みのリバウンドが情けない。しかし、やがて体重は増え始めた。減らすのではなく昔の体重に戻る器械だと知ったのは、鏡の前で懐かしい姿と再会した時。