2012年10月31日水曜日

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼に、X'masの予定を訊かれた。あるわけないじゃんと答える僕に、彼はケーキ屋のチラシを差し出す。嫌だよ、男二人でX'masなんて。苦笑する僕に彼は言った。「バイトの募集だが」

セリフ

#twnovel 「肌寒くなってきたから」信号待ちの路上で、夫がふいに指を絡めてきた。ちょっと何よ、私は猫かカイロか。もうすぐ2人の記念日だっていうのに、なんてデリカシーのない言葉。文句の一つでもと顔を上げ、秋空にふと思い出す。初めて手を繋いだときも彼、同じセリフ言ってたっけ。

ハアマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が電話をくれた。珍しいね、電話なんて。「風邪を移されたら敵わんからな」ちょっと待ってよ。僕、風邪なんてひいてないんだけど。そう答えるとしばしの沈黙の後、彼は言った。「かけ直す」

ハザマさんスピンオフ

#twnovel 「出会いは時の悪戯」という彼女の言葉を、俺は沈黙で受け入れていた。ほんの一夏の恋。「この夏がいつまでも続くといいのにね」儚げに俯く姿が切なくて、俺は彼女の願いを叶えた。時の悪戯など有り得ないことは俺がよく知っている。それなのに…。「ハザマさん、考え事?」「いや」

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、僕の親友が近いうちに結婚式を挙げると教えてくれた。おめでたい話だね。でも正直ご祝儀が厳しいなぁ。礼服も買わなきゃだし。そう話すと彼は言った。「心配するな。呼ばれないから」

2012年10月21日日曜日

ハザマさんスピンオフ

#twnovel 思い出って残酷よね。あんなに楽しかった貴方との日々が、別れた途端に忌まわしい出来事に変わるなんて。彼女はきっと、この先の人生も未来に向かい進んでいくのだろう。過去に目を向けることも、ましてや遡ることすらせず。…彼女は強い人だ。「ハザマさん、考え事?」「いや」

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼に、僕が来年の正月に年賀状を何枚貰うのか聞いてみた。予め貰う枚数が分かっていれば、無駄に買いすぎることもないものね。溜め息をついてから手帳を捲る手を止め、彼は言った。「喪中だ」

夢日記

#twnovel 夢日記をつけると気が触れるって、聞いたことある?いつか彼女が切り出した他愛のない話。睡眠って忘却と記憶とを整理する時間なのよね。日記につけちゃうと、忘れるはずだった過去も抱え込んでしまうの。だから…そんなキミの全てを忘れないために、僕は今日も夢物語を綴っている。

酒の神

 #twnovel #twnvday 一度だけ、酒の神に会ったことがある。路地裏のスナックのトイレで。サラリーマン風の彼は、薄汚れた壁にもたれ腰を抜かしていた。「俺は酒の神だ。だからお前は俺を介抱する義務がある」俺は静かにドアを閉めた。酒の神はトイレにいる。俺は無神論者になった。


毎月14日はツイノベの日! 今回のお題は「酒」です。下戸の方と、心が未成年の方と、既に飲み過ぎている方は「水」です。人の心をほぐし、あるいは神さえも宥めるお酒。あなたが振舞う酒はどんな物語に酔わせてくれますか? 【毎月14日はツイノベの日! お題「酒」「水」 #twnvday 】

扉の向こう

#twnovel 扉を開けるとそこに君がいた、なんて幻覚を見る程僕はまだ参っていないつもりだった。扉の向こうにいなかったら落胆するとぼやく僕に、「向こうにいないのは既に隣にいるからよ」と笑う。ふと試しに振り返ってみる。もぬけの殻のような部屋の中の、小さなポートレートと目が合った。

外出虫

#twnovel 帰宅すると、妻が「外出虫」を見せてくれた。昼間の奥様通販番組で買ったのだという。世話嫌いの彼女がペットなんて珍しいと思い、飼育ケースを覗いてみたが姿が見えない。「外出しがちな虫なのよ。だから世話が楽なの」なるほどね。「ところであなた、今日は随分帰りが早いのね」

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、僕の人生で一番輝く日を教えてやるという。 怖い気もするけど、その日が来たら教えてよ。今日がその日だって。そう頼むと彼は頷いた。「初めて会ったのはお前が幼稚園児の頃だったな」

#twnovel 喧嘩したこともない仲睦まじい2人なんて嘘だったんだ。君と対立するたびに僕は時を止め、巻き戻してやり直した。全ては君の笑顔が見たかったから。今まで黙っててごめん。そう詫びると彼女は満面の笑みを僕に向けた。「ありがとう。何回もやり直して、やっとその言葉が聞けた」