2012年5月31日木曜日

レンタル倉庫

#twnovel 抱えきれなくなった想い出をレンタル倉庫にぶち込んだ。整理することなく積み重ねられたそれらは、毎月末の口座引き落としの際に一瞬だけ僕の心を掠め、また暗がりに舞い戻る。失ったものと手に入れたものの違いすら明確に出来ないまま、僕は倉庫の中でいたずらに時を重ねている。

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、深夜に酒を持って現れた。黙っていたけど実は明日、彼女に告白するんだ。前祝い?それとも景気づけ? 伺う僕を彼の手が制す。「彼女だけが女じゃない」明日来て、…やっぱり来ないで。

2012年5月29日火曜日

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、現在片思い中の彼女を思い切って映画に誘えと言う。それってつまり脈アリってこと? 興奮して聞くと彼は首を横に振った。「あれは酷い駄作だが、失恋後に観るといい作品に思えるぞ」

昨日

#twnovel 昨日をください。そう言って出てきたのは「希望」だった。聞き間違いを正そうとする私を止め、店員が微笑む。「昨日には何があったのですか?」希望です。そう答えると彼女は私が返した希望を再び差し出した。「それなら合っていますよね」外は雨。明日の予報は晴れと彼女は告げた。

2012年5月23日水曜日

ラブレターの日

#twnovel 時が止まった世界で君を探す。思い出の公園、一緒に通った図書館、お気に入りのこの店のカウンターにも姿はない。「預かり物だよ」マスターが差し出す色褪せた一通の手紙。封を切るとあの頃の君が現れた。5月23日、今日はラブレターの日。時の彼方の君を想い、僕はペンを取る。

2012年5月21日月曜日

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼と一緒に金環日食を観察した。ねぇ知ってる?今回と同じ規模で次に見られるのは300年後なんだって。一生に一度の天体ショーだね。そう言うと彼は頷いた。「ああ、何度見てもいいものだ」

リソース

#twnovel 重要性の低い能力値を減らし仕事用途に割り振る。体内のリソース見直しを図り、私は昇進した。しかし…愛妻弁当を口にする度申し訳なく思う。味覚や美的感覚を削除した為に味が分からないのだ。せめてもの償いに朝のゴミ出しを買って出る。最近生ゴミが減った気がするが何故だろう。

2012年5月15日火曜日

#twnovel 降りしきる雨が僕の心を代弁していた。「本日はお2人らしい日和となりました」司会者が向く高砂席には学生時代の友人と、その彼女。「雨の放課後、傘を無くし困っていた新婦に声を掛けた新郎。相合い傘が結んだ縁とは…」照れ笑いで見つめ合う2人。彼女の傘は今も僕の手元にある。

恋石

空から恋石が落ちてきた。 #twnvday テレビがそう伝えるや否や電話が鳴った。「そっちの方に落ちたって。今から行くから」腐れ縁の女友達からだ。恋石を投げて命中した相手と結ばれる、だっけ? そんな噂話信じるなよ。笑って切ろうとする間際、耳元で声がした。「じゃ、避けないでね」




毎月14日はツイノベの日! 今回のお題はに宇宙ステーションSkylabが打ち上げられたことにちなんで「空」です。何もかもを呑み込み、時とともに移り変わる空。140字の絵筆で、あなたはどんな物語を空に浮かべますか?【毎月14日はツイノベの日! お題「空」 #twnvday 】

気まぐれサブ企画【空から恋石が落ちて来た。 #twnvday 】タグ含めて冒頭書き出し縛り。リプ不要。「恋石」は自由に設定してください。あなたはサブ企画に参加してもいいし参加しなくてもいい。気軽に楽しんでいきましょー♪【毎月14日はツイノベの日! お題「空」 #twnvday 】

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、今日は傘を持って家を出ろという。ありがとう、でも今日は荷物が多いんだ。雨が降ったらビニール傘でも買うよ。そう答えると彼は言った。「財布を忘れて出るから、傘は買えないぞ」

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、栄養面で偏りがちな僕の食生活が近々劇的に改善されると教えてくれた。料理上手な彼女が出来るの?身を乗り出す僕に彼は言った。「病院食は味気ないが我慢しろ。日頃の不摂生のツケだ」

時のかけら

#twnovel 長年連れ添った妻と死別した夜、死神が私に告げた。「時のかけらが貯まっているので、貴方はもう数十年寿命を延ばせますよ」人生の節々で生じたロスタイムのことだという。妻のいない余生に意味はない。断ると奴は言った。「大抵の男性は辞退しますね。女性は喜んで受け取りますが」

2012年5月7日月曜日

眠毛

#twnovel どうも眠くて堪らない。「それは『眠毛』のせいです」医師は言った。「剃ってサッパリすると眠気も消えますよ」なるほど、しかしまた生えてきたら同じ事じゃないか?それならいっそ永久脱毛したい。渋る医師を説き伏せ処置を受けた。それでこのザマだ。「聞いたぜ。不眠症だって?」

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。子供の頃、解らなかった宿題は寝ている間に彼が済ませてくれていた。そんな彼が、当時の僕を見に行こうと言う。嫌だよ、今さら恥ずかしいし。彼は首を横に振った。「今なら簡単に解けるだろ、宿題」

向き

#twnovel 「覚えてますか」風に乗った言葉は、けれど道路向かいにさえ届きやしない。どれだけ思いを込めても、ましてやあの頃になんてとても。巡る季節に身を委ねる怠惰な日常が醸しだす刹那の幻。時は巡らないし戻らないし止まらない。ただ、流れる向きは皆同じ。だから明日も生きていける。

古書店

#twnovel 馴染みの古書店主は、いつも私にぴったりの書物を選んでくれた。恋人に振られたら読む本、就職したら読む本、人生に疲れたら読む本…。彼は今、人生の最後に読む本を私に差し出した。突然の事に二の句が継げない私を諭すように一言。「死んでから読む本はお盆の頃の入荷だよ」