2012年4月28日土曜日

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、僕がGW中に旅先で怪我すると教えてくれた。大丈夫、去年のGWで事故っちゃったから今年は大人しくしてるつもり。そう答えると彼は慌てて手帳を捲った。「済まん、来る時を間違えた」

未来から来た

#twnovel その女性は未来から来たと言い、将来僕と結ばれる運命なのだと主張した。どうしても信じられずにいる僕に、彼女が1枚の写真を渋々取り出す。そこには僕と彼女、そして彼女によく似た幼い子供の姿が。まさか僕達の…?彼女は頭を振った。「あなたと離婚後に知り合う男性との子よ」

写真

#twnovel 広報誌の編集という仕事柄、他人の写真に触れる機会が多い。証明写真からスナップまで、送られてくる物は様々だ。集合写真の場合、本人識別のため裏面に指示を入れてもらうようにしている。「右から2番目が私です」河原で撮られた1枚のスナップ。どう見ても1人しか写っていない。

上半身

#twnovel 「足元に上半身だけの幽霊が出るんです」霊媒師はおもむろに頷いた。「ここは昔病院で、この床はフロアの高さでした。そのつもりで彷徨っているのでしょう」「それなら階下の天井に下半身が出現するはずです。なのにそんな話は聞かない」「そりゃそうだ。幽霊に足がありますか?」

未来を

#twnovel 未来を変えることはできないけど、過去を変えることならできるのよ。悲しみに暮れた君の声が春の風に乗る。共に歩めない未来は不変で、美しい思い出は憎しみにすら変わる。2人の未来を断ち切った君を変える術を僕は持たない。思い出と憎しみの分岐点で、僕は未来に別れを告げる。

昨日の

#twnovel 帰宅すると昨日の俺が待っていた。そういや昨日、明日へ出掛けた俺はどうやって昨日に戻ったんだっけ?「一晩泊めてくれないか?」目の前の俺は言った。なるほど。俺は家を出て彼女の元へ向かう。「ごめん、去年のあなたが来てるの」待てよ、俺たち今年に入ってからの付き合いだろ。

2012年4月23日月曜日

失踪

#twnovel 時々駆られる失踪したい衝動を、疾走に変換することで抑えてきた。だが限界だ。変換ミスを防ぐため、失踪はやめて家出しようと決めた。そんな折、呑気な友人達が酒や食べ物を持参して訪れた。花見の予定が急な雨に祟られたらしい。気がつくと僕は、それなら家でしようと言っていた。

2012年4月18日水曜日

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、僕が来年引っ越しをすると教えてくれた。現在の1Kから3LDKだという。宝くじが当たるの?もしや結婚とか?はしゃぐ僕を見て彼は溜め息をついた。「実家の間取りを忘れたのか?」

夢栞

#twnovel 目の前に並んだご馳走を食べようとして目が覚めたってことはない?僕もそんな夢を見た事があってね、そこでこの「夢栞」さ。こいつを使えばいつでも夢の続きを見られる。そう、凄い発明なんだよ。ただ問題があってね。ご馳走の話なんだけど、翌日続きを見たらすっかり痛んでいて…。

新入生の皆さん

#twnovel 「新入生の皆さんに、一言申し上げたいと思います」「校長先生、140字以内でお願いします」「何っ?」「あ、この会話も含めてですのでよろしく」「そんなこと聞いとらんぞ。あー、えー、新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。皆さんはこれか」「ありがとうございました」

念じる3

#twnovel 「利用者が念じる『杜氏』に連れていってくれるのじゃ」タイムマシンを改良した博士はそう言ってマシンを作動させた。それ以来僕は博士と共に全国の酒蔵を呑み歩いている。「どうだ、便利なモノじゃろう」赤ら顔の博士が千鳥足で座席に乗り込む。もはやこれはタイムマシンではない。

念じる2

#twnovel 「利用者が念じる『冬至』に連れていってくれるのじゃ」タイムマシンを改良した博士はそう言って未来へ跳んだ。それ以来彼は毎年12月22日頃に僕を呼び出す。「それでさっきの話の続きじゃがの」そんな事言われても僕にとっては数ヶ月前の話だ。彼との話はいつも噛み合わない。

念じる1

#twnovel 「利用者が念じる『当時』に連れていってくれるのじゃ」タイムマシンを試作した博士はそう言って過去へ跳んだ。彼は時間旅行理論を着想した『当時』にタイムスリップし、当時と現在の間を延々とループしていると、僕は後に置き手紙で知る。未完成の理論が完成することは永遠にない。

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、僕が大切な面接に大遅刻すると教えてくれた。ありがとうハザマさん、絶対寝坊しないよ!ありったけの目覚まし時計をセットしていると彼は言った。「面接、明日じゃなくて今日だぞ」

日記

#twnovel これは日記よ、小説じゃない。僕が書く私小説を読んだ彼女からの痛烈な批評。作品は僕らの過去から現在を、感情のすれ違いも余すことなく綴っている。反論するのは野暮だ。これを日記と呼ぶならそれでも構わない。君が僕の前から居なくなったとしても、僕は2人の物語を紡ぎ続ける。

#twnovel 寂れた路地裏で、商品欄が?表示の自販機を見掛けた。買ってみると「安堵缶」という温かいスープが出た。2本目の「不快缶」は腐敗臭がした。当たりと出たのでもう1本。ラベルには「絶望缶」。途端、猛烈な腹痛に襲われた。やっぱり腐ってやがったか。周囲にトイレは見あたらない。

呼び出し

#twnovel 急な呼び出しの理由は長年の経験で聞かずとも分かる。遅れて店に着いた僕に向けて彼女の口から延々と聞かされる事になる愚痴の内容も。「今度こそ間違いないと思ってたの、なのにボタンを掛け違えたみたいに…」そろそろ気付いて欲しいんだけどな。掛け違えた先にあるボタンの事も。

この店が好き

#twnovel 馴染みの店に牛丼が登場。向かいの某チェーン店より若干高いが、それでも他のメニューの半額程度。ねぇ大将、ここの客はこの店が好きなんだよ。値段で勝負しても大手には敵わないよ?愚痴る傍らで牛丼の注文が入った。次の瞬間、調理担当の奥さんが財布を手に勝手口から出て行った。

2012年4月4日水曜日

ここに

#twnovel 僕はここにいます。君がどこにいるか知らないけど。ネットを介した繋がりは近いようで遠くて、ほんの数m先で生活を営む隣人よりも遠い。隣人の定義をどこに置くかで世界はドラスティックに変わる。僕はここにいる、君はもういない。明日は見えない、昨日の温もりは残っている。

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、今夜の外出は取りやめろと言う。嫌だよ、楽しみにしていた合コンなのに。え、羨ましいの?からかうと彼は溜め息をついた。「朝までヤケ酒の相手をする羽目になる俺のことも考えろ」

カトリーヌさん

#twnovel 留学生のカトリーヌさんは蚊も殺せぬ優しい心の持ち主だ。そんな彼女が日本に来てショックを受けたのが蚊取り線香だという。あれは大量殺戮兵器だと彼女は涙を流した。彼女はその後、交際中の香取君と破局してしまうのだが、原因が香取君の教員免許取得と関係があるのかは不明だ。

その店

#twnovel その店で、自分に必要な物を見つけるのは容易い事ではない。見慣れない案内板を頼りに無数とも言える商品を掻き分けて目的の場所まで辿り着かねばならず、訊ねようにも店員は無愛想だ。これではまるで…「ホームセンターじゃなくてアウェイセンターってオチはナシね」「えっと…」

迂闊部

#twnovel 心躍る新生活は早々に躓いた。うっかり履修届を出し忘れ、希望するサークルは募集を締め切っていた。そこへ見知らぬ先輩が声を掛けてきた。「良かったら『迂闊部』に入らないか?」誘われるがままに入部したが、程なく部が活動届けを出し忘れていたことが発覚し、迂闊部は消滅した。

遡行ヒーター

#twnovel 「遡行ヒーターを買ったんだ」「今さらヒーターなんか買うなよ」「それがこの機械、過去に遡って暖めてくれるんだ。凍える夜の記憶も暖かく変わる」「凄いな。凍死者宛てに送ってやれば命が助かるんじゃないのか?」「いや。警察の検証では熱で腐乱した凍死体が発見されたそうだ」

#twnovel 待ちわびた春がやって来た。矢も盾もたまらずに取り出し、幸せな気持ちに浸る僕の腕を傍らの彼女が突く。「ハンコ」我に返ると、対面のおじさんが微笑みを浮かべていた。「おめでとうございます」ありきたりな言葉に見送られ街へ駆け出た僕らは、手を取り合って2人の春を謳歌する。

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼の素性を僕は何も知らない。ダメモトで誕生日を聞くとすんなり教えてくれた。え、今日なの? お誕生日おめでとう!祝福すると彼は急にそっぽを向いて俯いた。「エイプリ…いや何でもない」

エイプリル・フール

#twnovel 今日は1日嘘をつく。2人で決めた他愛のないゲーム。ライブのチケット取れなかったんだ。「行きたくなかったし」僕のこと好き?「大嫌い」うん、僕もだよ。それじぁね。彼女の顔がみるみるうちに涙で歪む。ちょっと待って、嘘だってば。慌てる僕の前で悪戯な笑顔が咲く。「嘘泣き」

懐かしい道

#twnovel 学生の頃通った懐かしい道を2人で歩く。美味しい珈琲をいれる店、友達がバイトしていた古着屋に桜並木。少しだけ変わった景色に各々の記憶の断片をパッチワークのように貼りつける作業。交わることのなかった思い出を手繰り寄せ、見つめ合った2人はあの頃繋げなかった手を繋ぐ。

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、1人暮らしのこの部屋を掃除しろと言う。ひょっとして近々彼女が出来て、家に呼ぶとかそんな展開? ニヤつく僕を彼は不思議そうな顔で見た。「母親が来るのがそんなに嬉しいか?」

思い出写真館

#twnovel 過ぎ去った人生の一場面を写真にしてくれる「思い出写真館」。父の顔を知らずに育った私は、両親と一緒の場面を注文した。まだ見ぬ父との対面に緊張しながら写真を受け取る。そこにはベビーベッドに寝かされた私と若かりし頃の母、そしてその肩に手を置く近所のおじさんの姿…。

逆立ち食いそば屋

#twnovel 天井付近に設置されたフックに足を掛け、逆さまに食べる「逆立ち食いそば屋」。物珍しさとバカバカしさが受け、逆立ち食いそば女子なるものまで現れた。しかし評論家の一人が「あれは逆立ちと言うより宙吊りではないか?」と疑問を呈した件を境にブームは終息し、店主は首を吊った。

ハザマさん

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、新しい自転車を買えと言う。そうだね、新鮮な気分で春を迎えたいよね。早速カタログを眺めながらウキウキしている僕に彼は言った。「今、乗っているのは近々盗まれるから」

出会った日のこと

#twnovel 出会った日のことを貴方は覚えていない。喧嘩をするたびに出る彼女の常套句。そう言う君だって別れた日のことを覚えちゃいない。錯綜する時間軸の中で伸ばした手が繋がって、僕らは今ここにいる。刹那のすれ違いが永遠に続けばいいと願いながら、今日も2人で泣いて笑って喧嘩する。

#twnovel 自分探しの旅に出掛けた兄が半年ぶりに帰ってきた。見つかったかと訊ねると、隣町の交番に届けられていたという。よかったねと声を掛け肩を叩く。心なしかひとまわり小さくなったような気がした。もしかして痩せた? 兄は笑った。「謝礼に1割払った。いいダイエットになったよ」

カウンセラー

#twnovel 世話人として有名な町内会長がカウンセラーに転身した。評判は相変わらず良い。やがて入居するマンションの前に頻繁にバキュームカーが駐まるようになった。「揉め事は水に流せば済むけど、人の気持ちは汲み取らなきゃね」そう彼は笑ったが、気持ちの行き先は教えてくれなかった。

命名権

#twnovel 歳入安定を目的として、国はあらゆる命名権を売り出した。その一つが干支である。条件は今までと読みが変わらないこと。1社が名乗りを上げ、翌年から十二支は「子・丑・寅・Wooo・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」となった。Hitachi Inspire the Next