2011年9月26日月曜日

どこでもドア

#twnovel どこでもドアが発売されたと聞き、早速注文した。届いたのはピンク色をした紛うこと無きあのドア。早速行きたい場所を念じてドアを開けてみると、その先にはドアがあった。開けても開けてもピンクのドア。クレームを入れようと取説に目をやる。「どこまでもドア」と書かれていた。

ボックス席

#twnovel 僕の人生は電車のボックス席に後ろ向きに座っているようなもので、進んでいるのに前方は視界に入らず、過去は否応なく遠くなっていく。向かい席に座って未来を教えてくれる予言者がいたらいいのにと思うけど、大切な人には恥ずかしがらずに隣に並んで座ってほしい。例えばきみとか。

2011年9月20日火曜日

匂いも伝えられる電話

#twnovel 「匂いも伝えられる電話ってあったら便利じゃね? 食い物屋は繁盛間違いなし、遠恋中のカップルにもきっと受けるぜ」「それ買っても電話してくんなよ」「何でよ?」「口臭電話って言われたいのか」

思い出フリマ3

#twnovel 不要になった思い出を持ち寄る思い出フリマ。幼すぎたが故に別れてしまった淡い思い出を抱え会場を訪れると、見覚えのある彼の姿が。私だと気付かない彼。非売品と言われた彼の思い出が気になる。「そちらの思い出と交換なら」彼の申し出をやんわり断る私。「私のも非売品なんです」

思い出フリマ2

#twnovel 不要になった思い出を持ち寄る思い出フリマに、捨てきれない昔の恋を出品した。学生時代のありふれた恋愛ごっこだ。誰も見向きもしない。「これ、お幾らですか?」聞き覚えのある声に顔を上げて息を呑む。「すみません、これ非売品なんですよ」平静を装ってそう答えるのが精一杯。

思い出フリマ1

#twnovel 不要になった思い出を持ち寄る思い出フリマ。別れたの恋人との日々や、大切な家族との離別の悲しみなどが並び、感情の疑似体験を求める人々で賑わう。時効前の殺人犯の思い出を買ったミステリー作家が自責の念に苛まれて自首したことから広く知られるようになった。不定期開催。

2011年9月16日金曜日

銀世界

#twnovel 外出しようと玄関扉を開けるとそこは一面の銀世界。テレビをつけるとニュースは異常気象と伝えていた。そんな言葉で片付けるなんて信じられない。やがてアナウンサーは世界中の銀の相場が暴落していると告げた。そりゃそうでしょうよ。私は気を取り直して外に出る。一面の銀世界へ。

2011年9月15日木曜日

100円位ショップ

#twnovel 90円台から100円台の商品が1円刻みの値付けで並ぶ「100円位ショップ」が人気。端数を出さずピタリ100円単位で会計を済ませる爽快感を求め、人々は店を訪れる。やがて、財布を圧迫する小銭を一度の会計で綺麗に使い切る芸当を披露する猛者が現れた。楽しみ方は尽きない。

2011年9月14日水曜日

ロゼッタストーン

#twnvday 「幼稚園の頃に女の子から貰ったラブレターが大掃除で出てきたんだ。初めて書いたひらがなはそりゃ酷いものでね、当時はそれでも読んでたんだから驚きだよ。妻もまるでロゼッタストーンねと他人事みたいだし。なぁ、ビックリだろ?」「ビックリなのは幼稚園で人生決めたお前らだよ」


毎月14日はツイノベの日! 今月のお題は「ロゼッタ・ストーン(1822年の9/14にヒエログリフ(絵文字)が解読されたのにちなんで)」です! 物語の紡ぎ手と読み手とを繋ぐ140字のロゼッタ・ストーンをこの世界に掘り込みましょう♪【毎月14日はツイノベの日! #twnvday 】

2011年9月13日火曜日

雨を飴に換えるサービス

#twnovel 雨を飴に換えるサービスが子供達に人気だったのでバリエーションを拡げた。箸を橋に換えてみたが反応は今一つ。次に生家を製菓に換えたら子供達は大喜び。たちまち町中がお菓子の家だらけになった。そこへ親たちが大挙して怒鳴り込んできたので、退去に換えてお引き取り願った。

時空宅配便

#twnovel ピンポーン、時空宅配便です。「俺、何も頼んでないよ。金欠でメシも食ってないんだから。って何この高級肉」未来の奥様よりお届け物です。「え、俺結婚できるの?そんで嫁さんが夫の貧乏時代を案じて送ってくれたの?嬉しいなぁ」お言付けがございます。『まだ死なれちゃ困るのよ』

2011年9月9日金曜日

秋空

#twnovel 君を想う言葉はこの瞬間も幾らでも思い浮かぶのに、口にしたところで結局笛の音にかき消されてしまう。秋空の下、ぼくらはたった一本の綱を引き合って汗を流す敵同士。出来るならくっつきあっていたいのが本音だけど、この高い空を見上げながら、無駄に楽しい思い出を刻んでいる。

解像度

#twnovel 心の解像度を上げればきっと、君のことが鮮明に見えてくる。秘めた聡明な心の景色も、知りたくなかった深層の醜い汚泥も。だからぼんやり曇ったレンズで君を迎えると決めた。ごめんね、髪を切ったことにも気が付かないで。愚鈍な僕に向けるその眼差しが真実だって信じたいんだ。

一目惚れ

#twnovel 一目惚れと言ってよかった。涼みに入った図書館での衝撃的な出会い。なぜあのとき手を離してしまったのか、それだけが悔やまれる。それから僕は毎日のように図書館に通った。ようやく名前を知ったときには、半年先まで予約で一杯だと言われた。…僕は諦めてその本を書店で購入した。

2011年9月6日火曜日

エヌ氏

#twnovel エヌ氏について話を聞きたいと刑事は言った。彼はバーの顔見知りで、それ以上のことは知らない。そう答えると刑事は渋々帰って行った。エヌ氏はその後も何事もなかったようにバーに現れた。ある日は青年の姿で、またある日は顎髭をたくわえた老人の姿で。でも誰も気にしていない。

9月6日はショートショートの神様 星新一さん生誕85周年ということで、「ノックの音がした」と「エヌ氏」をお題にしてみました。

ノックの音がした

#twnovel 友人や親戚達が帰ると、家の中は私と彼だけが残された。時計の針に目をやり、私は先刻までひっきりなしに出入りのあった玄関扉を閉めた。今夜はもう尋ねてくる人もいないだろう。彼と私の二人だけの長い夜のはじまりだ。ふいにノックの音がした。彼が眠る、柩の内側から。

9月6日はショートショートの神様 星新一さん生誕85周年ということで、「ノックの音がした」と「エヌ氏」をお題にしてみました。

2011年9月5日月曜日

生き貝

#twnovel 旅行先の土産物屋で生き貝の置物を手に入れてからというもの、毎日が楽しいことばかり。でも男運のなさは相変わらずで、言い寄ってくるのは中身のない男だけ。もう一度あの店で生き貝を手に入れよう。旅立とうとする私を友人が止めた。「無駄だと思うよ。あの置物、中身カラじゃん」

キスの味

#twnovel 黄昏時に交わした初めてのキスの味は杏のように甘酸っぱかったのに、試しに杏を買って食べてみたら思い出とは似ても似つかない。昼食に二人で食べた冷やし中華の酸味かと思ったがやはり違う。映画館で食べたスッパムーチョの味だと気付いた時にはどうでもよくなってしまった。

時が止まった場所

#twnovel 時が止まった場所を発見した。宇宙は開闢以来膨張し続けている。そして時間と空間の同一性から鑑みて、このような事態は起こり得るのであろうか。私には分からない。しかし今日は9月1日である。そしてここはまだ8月らしいのだ。 http://bit.ly/p9aAGp


いっこうに「第2回Twitter小説大賞」の発表がないことへの苛立ちを表現してみました。他意はありません。

適齢機

#twnovel プロポーズ大作戦。最近冷たくされている彼女に「適齢機」を向けた。「私と結婚して!」突然抱きついて来る彼女。向こうから言われると逆に白けてしまう。それにどうして僕は彼女と結婚したかったのだろう。泣きだしそうな彼女のバッグからこぼれ落ちた「倦怠機」が僕を向いていた。